最高裁判所第二小法廷 平成4年(あ)129号 決定 1995年7月19日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人西本克命の上告趣意は、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
なお、本件において、虚偽の事実に基づいて建設業法三条一項の許可を受けた者は有限会社甲野塗装工業であり、被告人は、同社の代表取締役として、同社の業務に関し、右違反行為をしたのであるから、昭和六二年法律第六九号による改正前の建設業法四八条に「その行為者を罰するほか」とあることにより、同法四五条一項三号の罪の行為者として処罰されるものと解すべきである。したがって、原判決が被告人の本件行為に対しては同法四八条を適用すべきでないとしているのは誤りであるが、この違法をもって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない(最高裁昭和五四年(あ)第一四五一号同五五年一〇月三一日第一小法廷決定・刑集三四巻五号三六七頁、同昭和五四年(あ)第一二五七号同五五年一一月七日第一小法廷決定・刑集三四巻六号三八一頁参照)。
また、第一審判決が累犯前科として認定した各前科と本件犯行は、累犯の関係にないことが明らかであるから、累犯加重をした第一審判決の違法を看過した原判決には法令の適用を誤った違法があるが、この違法をもって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治)